日本酒をおいしく提供するために

下段はテイスティング競技会で決勝に残った8人と「飲食店日本酒提供者協会」理事長(右)、松崎晴雄さん(左から5人目)。優勝した笠原佑介さんは左から6人目。

飲食店主らが自ら動き出した

日本酒を扱う飲食店が急増している昨今。日本酒ファンとしては嬉しい現象です。が、それらが全て本来の味で提供されているか、ちょっと不安に思うこともあります。

日本酒に興味を持ち始めたばかりといった人たちには、特に飲食店で味わうお酒が情報源の多くを占めることになります。そこでおいしいお酒に出合えるか否かは、重要なことですよね。お酒がちゃんと適正な状態で保存され、お酒を活かす方法でサーブされたか、その意識が高いお店&高いスタッフと出会うか、それは、飲み手である私たちはもちろんですが、送り出している酒蔵にとってより気になる問題でしょう。

酒蔵が丹誠込めて醸した日本酒を、正しい知識を持って、最良の状態で客に提供していくためにと、もともと日本酒に力を入れて提供している飲食店主や従事者有志が自ら動き出し、2013年9月17日に結成された「飲食店日本酒提供者協会」。結成以降、日中や仕事の終わった深夜など、勉強会、情報交換などを重ねています。

いずれは、日本酒を保管、提供する際の基本要項や注意点などをマニュアル化し、資格システムの整備までもって行こうというものです。

そして、協会の設立発表を兼ねて、先月、初の協会主催イベント「SAKENOVA サケノバ」が行なわれました。

一般消費者向けの試飲会と、日本酒を扱う店主やスタッフなど、従事者向けの日本酒テイスティング競技会の2本立てで行なわれました。

2部制で行なわれた試飲会は、早い時期にチケットが完売し、合計で700人も訪れたそうです。試飲用の盃には、このブログでもご紹介したカネコ小兵製陶所さんの「ミニ一献盃」4種類の中から選ぶことができました。加えておつまみには、生ハムや馬肉、カナッペにおかき、という、ユニークなセレクション。新鮮な驚きもあり、食べ合わせも楽しめました。

その同じ頃、日本酒を扱う飲食店スタッフの方たちが、きき酒のコンテストに挑んでいたのでした。待合室代わりの廊下では、飲食関係の仲間と談笑したり、楽しそうな会話も聞かれましたが、すでに緊張感が伝わってきます。中に入るとそれぞれが神経を集中させて、お酒と向き合っています。そして、栄えある第1回の受賞者は、2位が梶川大輔「大塚 地酒や もっと」勤務、1位 笠原佑介「丸八 高田馬場本店」勤務。

お馴染みのお店の方もいらっしゃるとは思いますが、せっかくの機会なので、試飲会場の日本酒ファンと、競技会々場にいる飲食店関係者の両者をリンクさせるタイミングがあっても楽しかったのではないかな、とも思いました。

————— 「SAKENOVA サケノバ」 —————

【日 時】2014年5月25日(入れ替え制)
・・・・・1部=13:00(12:45開場)〜15:00、2部=16:00(15:45開場)〜18:00
【場 所】渋谷・シダックスビレッジ2F

<<2014 参加蔵元一覧>>

01)『陸奥八仙』(青森県) 02)『阿部勘』(宮城県)
03)『乾坤一』(宮城県)  04)『ゆきの美人』(秋田県)
05)『新政』(秋田県)   06)『春霞』(秋田県)
07)『一白水成』(秋田県) 08)『白瀑』(秋田県)
09)『冩樂』(福島県)   10)『一品』(茨城県)
11)『来福』(茨城県)   12)『浅間山』(群馬県)
13)『巌』(群馬県)    14)『結人』(群馬県)
15)『屋守』(東京都)   16)『鶴齢』(新潟県)
17)『遊穂』(石川県)   18)『亀齢』(長野県)
19)『福無量』(長野県)  20)『秀峰喜久盛』(長野県)
21)『三千櫻』(岐阜県)  22)『開運』(静岡県)
23)『忠臣蔵』(兵庫県)  24)『神結』(兵庫県)
25)『龍力 』(兵庫県)  26)『雨後の月』(広島県)
27)『富久長』(広島県)  28)『賀茂金秀』(広島県)
29)『天寶一』(広島県)  30)『宝剣』(広島県)
31)『美和桜』(広島県)  32)『寿喜心』(愛媛県)
33)『亀泉』(高知県)   34)『南』(高知県)
35)『七田』(佐賀県)   36)『鍋島』(佐賀県)


『御前酒』が奏でた「日本酒と音楽をきく会」

雄町のふるさと岡山から辻本店若き蔵元!

造り手も、飲み手も、多くのファンを持つ酒米(酒造好適米)雄町。
——と言えば、岡山県(岡山県と広島県の位置関係、わかりますよね?^^)。

雄町は、日本最古の酒米(酒造好適米)であり、山田錦や五百万石などのルーツでもあるんですね。

手前の稲が雄町。すてきなディスプレイでみせます。

御前酒蔵元辻本店」さんは、県内でも北側にある歴史の町・真庭市勝山で、文化元年(1804年)から酒造りを続けているお蔵さんです。勝山藩主に献上していたことからその名がつき、当時は『御膳酒』と書いたのだそうです。

音楽活動や俳優業もしていた7代目、辻総一郎さん。

2007年に岡山県初の女性杜氏となった姉の辻麻衣子さんと、姉弟で酒蔵を守り運営をしているのが、7代目、辻総一郎さん。

今年の4月、お二人のお父様で前社長の辻圴一郎氏が、自社を解放して盛大に開催した、第1回「御前酒祭り」の直後に急逝されました。そして、総一郎さんが社長に就かれたのでした。

この秋、「いいね!日本酒。」にご参加いただいた、と思っていたら、ちょうど東京でイベントが行なわれるというので、お伺いしました。

開催されたのは11月2日。
ちょっと時間が経ってしまいましたが、素敵な会でしたのでご報告します。

提供されたお酒は冒頭の写真の5種類6通り。

左から、「御前酒 菩提酛 夏仕込み」、「御前酒 山廃純米 昔造り」、「GOZENSHU 9 ブルーボトル」、「GOZENSHU 9 グリーンボトル」、「御前酒 純米 菩提酛濁り酒」、「御前酒 山廃純米 昔造り」の燗。

中でも「9(ナイン)」とは、麻衣子杜氏を中心に9人の若い蔵人たちが若い人に向けて作った新しいコンセプトのブランド。2008年のスタート時には、3週間で完売し話題になりました。伝統を今に生かそうと、スタイリッシュなボトルからもその意気込みが伝わってきます。(ご想像通り、よく「9号酵母ですか?」と言われるそうです)

違いを楽しんでもらうために、順番に飲み干してからカウンターへ行って次をいただく、というスタイルがなんだか楽しめました。

主催した酒食ジャーナリストの山本洋子さんからお酒や料理の愛情あふれる解説。

場所は青山のヴィーガンカフェ『PURE CAFE』。表通りから1本入った静かな通りに面し、ガラス張りのAVEDAサロンの1階にあります。女性好みですねぇ。イベントなどで、ときどき利用させていただくことがありますが、どれもおいしい! 日本酒ファンの間でも知る人ぞ知る、日本酒のラインナップが充実したカフェなのです。

『御前酒』の特徴と言えるのが菩提酛造り。鎌倉時代以降に開発されたといわれる造り方だそうで、大正時代頃にはほとんど途絶えてしまっているのだとか。

現在、最も広く行なわれている速醸造りでは一般的に、酒母=酛を造る際に蒸し米、麹、酵母、仕込み水と一緒に市販の精製した乳酸を入れますが、菩提酛を造る際には、この乳酸を自分で造って入れるというものです。生米と蒸米を水に浸けておくと、乳酸菌を大量に含んだ水、「そやし水」ができあがります。この乳酸入りの水を、仕込み水にして酒母を仕込むということです。

ただし、辻本店さんでは、この菩提酛の造り方をベースに、先代杜氏が研究を重ねて編み出した製法で御前酒菩提酛を造るとのこと。それは、生米と蒸し米の代わりに少量の米麹だけを水につけて乳酸を繁殖させて独自の「そやし水」を造り、さらに、安全性のために加熱殺菌してから仕込み水にするというものです。

菩提酛だけでなく、違いがわかります。

この日は「そやし水」を持参してくださり、試飲させていただいたのですが、乳酸を含んでいるということで 、やや白濁した水。ほのかに甘みと酸味があっておいしかったのです。

菩提酛についてのわかりやすい説明図も用意してくれましたし、さらに、分厚い資料も持参して説明をしてくださいました。

流通情報企画の小島稔氏からも激励
日本酒ジャーナリストの松崎晴雄さんと山本洋子さん

 

実は、この日は7代目に代替わりして初のお酒の会だったのだそうです。BGMには、Jazz好きだった先代が送り出された日にも流れていたというビートルズ。

謙虚で前向きな若き蔵元とそれを見守る暖かいまなざしに、なんだかこちらも温かい気持ちになって帰路についた日でした。

余談ながら、お写真でしか拝見していませんが、なんとなくいい味出しているお姉様、麻衣子杜氏にも、ぜひお会いしてみたくなりました。