「日本酒のためなら」—山同敦子さん 「ワインは恋人、本格焼酎は仲間、日本酒は連れ合い」

『極上の酒を生む土と人 大地を醸す』(講談社)『愛と情熱の日本酒』(ダイヤモンド社、ちくま文庫)などでおなじみの山同敦子さん。

いよいよスタート

“approved!” 「承認!」。
12月4日(水)深夜23:56、(現地18:56)和食が世界文化遺産に登録されて、和食と共に日本酒も、ますます、注目を浴びそうです。

たいへんお待たせしました。ミニ・シリーズ、「日本酒のためなら」。

ちょっと前までは女性がお酒なんてという時代もありました。しかし今では、女性が「こんなに素晴らしい日本酒なんだから、もっと広く知ってもらいたい」……、そんな思いひとつで、執筆、セミナー、講演会、コーディネイト、鑑評会など、東奔西走して活躍しています。そんな方たちをご紹介すると共に、その方が日頃聞いてみたいと思っている事を代わって問いかける。そこから見えてくるものは、日本酒の未来?

第1回にご登場いただくのは、日本酒ノンフィクション作家の山同敦子さん。
山同さんからの、「貴方が抱く『日本酒のイメージ』は?」、という質問に、たくさんの方にご回答をいただきました。
最終結果は以下の通りです。ご協力、ありがとうございました。
どんなご感想をお持ちですか。

この質問が出て来た背景を伺うと、
「日本酒人気と言いつつ、日本酒が好きな人とそうでない人との間がどんどん開いてしまっている気がしているのです。好きな人は『磨きは? 酵母は?』から、さらにマニアックな世界に入って、蔵見学にも通ってどんどんはまり込んでいく。

けれど、そうでもない人は、未だに『オヤジが酔っぱらうための酒だ』と思っている。『アルコールがつんとするでしょ』とか、『おいしいお酒はすっごく高いんでしょ』と初期の大吟醸ブームの記憶のまま、『熱燗で飲むんでしょ』とか遠い昔の記憶のまま。

その後、焼酎ブームがあり、ワインの人気が上がり、そこで日本酒から離れた人は、現代の日本酒がこんなにレベルが上がっていることに全く気づいていない、興味も持っていないのではないか、それはなぜなんだろうと。それが知りたかったんです」

申し訳ないことに、一つしか答えることができないので、嫌いな部分を答えていただく余裕はなくて、さすが「いいね!日本酒。」にご参加されている方の「実際に飲んでいる日本酒の良いところ、好きなところランキング」になっています。

「ブームの頃のワインもーー例えばブルゴーニュの良いものなどはすごく高いんだけどーそういうお酒ばかりだった。フランスのラングドックとか大量に造られて、それなりにおいしくて手頃な価格のものもあったのに、日本には入って来なかった。ところが10年ほど前からはそういうワインもたくさん入っているので、ワインの方が身近なお酒になってしまっている。日本酒を見直すきっかけがなかった。

でも、最近、日本酒の若い造り手が増えて来たことはいいきっかけになっていますね。造りもするし、試飲会にも出てくるので、飲み手が『自分と同世代』だと親近感が湧いている。

そして、何よりお酒のレベルが上がったことが最も大きな要因だとは思います。しかもワインなどと比べて安い。ワインのフルサイズボトルは安いといってもおいしく飲めるのは1000円台〜。日本酒で1000円台なら純米吟醸の4合瓶が買える。なのに、知らない人はまだ日本酒が高いと思っている。お酒の会も、近年は女性がすっごく増えているのに、昔のように男性ばかりで行きにくいと思われている」

確かに、それぞれの会の個性もありますが、若い女性も増えて来ましたし、女性ばっかり!ということもありますね。

「それに、昔は名酒居酒屋や郷土料理の店などでなければおいしい地酒がなかったけれど、今ではフツウの居酒屋さんでもおいしい地酒を置いている。若い料理人兼オーナーのお店が増えていて、彼らが自分の料理に合うおいしい日本酒を選んで置くようになって。しかも完全な和食というより、オリジナルの洋風なアレンジもあったり、居酒屋自体も変わって来ているから、気がついている人は、日本酒もおいしいものだと分かって来た。和洋中がミックスしている自宅でも構えずに飲める。

それが、このアンケートの結果にも現れている、と思いますね。『いろんな料理と楽しめる』というポイントが最も多いのは嬉しいですね。みんな、料理と楽しんでるんだ、と思いました。日本酒は種類や銘柄を選べば、いろんな料理に合うし、カジュアルで身近なものとして楽しんでどんどんハマってる」

質が高いのにカジュアルに飲めるのが日本酒のいいところ、なんですが、

「日本酒は珍味が必須と思っている人も、まだほんとに多いんですけどね」という。

そうは言ってもワインのおかげ?

そろそろ山同さんご自身について、と思うのですが、日本酒への思いで、山同さんのお話が止まりません。

「日本酒を料理に合せて選ぶようになったのは、やはりワイン・ブームを経て来たことが大きかったと思いますね」

突然ふって湧いたようなワイン・ブーム。それに対応して、ワインについて書ける数少ないライターをされていたことで、その頃の事情については良〜くご存知です。

「あの頃、『ワインも日本料理に合いますよ』っていうプレゼンテーションもたくさんやったんです。そうして、みんなワインにハマっていった……。

だけれども、時間が経ってふと気づいたら、日本酒だってそうだ!と。そのことに、料理の作り手も、さらにはお酒の造り手も気づいたんですよ。

昔は日本酒しか飲まない造り手がほとんどで、食べるのも地元の郷土料理だったからそれに合わせたお酒を造る。現代では、飲み手はもちろん造り手もワインや焼酎、さまざまなお酒を飲むし、和洋中、様々な料理を食べる。その食生活に合せたお酒を造る。飲み手も変わったけれど、ちゃんと造り手も変わっているんですよ。

そういう意味では、完全な地酒、というカラーは薄れて来ているとも言えますが、郷土料理自体も少しずつ変化をしていますから」

その土地の料理に合せたお酒、その土地の風土から生まれるお酒、だからこその地酒。その一方で、物流と情報の発達、活発化により、都市部のみならず、地方の食文化も変わって来ています。全てが均一化されているかというとそんなはずもなく、地方色、地方の嗜好はやはり残るものですから、そこへ新たな味や香りが加味されて来た、複雑でバリエーションが増えた、という、なんとも贅沢な時代に突入しているということがいえるのですね。

「かつては、隣りの県のお酒さえ飲む機会がなくて、そのために、東京や大阪へ行く、という蔵元さんの話を聞いたことがあります。地方では、20年前には隣町のお酒さえ飲む機会がほとんどなかった。逆に考えると、それでやっていけたわけです。そういう意味では、細かい区分けで地方色が豊かに生きていたといえます。

そういう特性が崩れて来た、という見方もありますが、その反面、他の町や県のお酒を知ったことで、全体的にレベルが上がって来た、ということですから。

それ以前に、お酒に関して言えば、意識して料理に合せたというよりは、日頃の食生活で培われた味覚が反映されて、自ずと料理に合っていた、という部分が大きかったのではないかと思いますね。それを素直に表現して、お酒に反映させて来た。

ただし、かつては男性しか飲まなかったから、食事の前に珍味でお酒を、というシーンが多かった。今は、女性も飲めるし、食事の場面に当たり前にお酒がある、という風景になっている。それはワインの飲み方を知ったからだと思うんです」

「日本酒の日」に合わせて大阪で行なわれた「日本酒1週間」というイベントの初日、10月1日のゲストスピーカーとして登場した山同さん。会場には大阪の酒蔵『秋鹿』の社長もいらして、ステージに。

そう考えると、現代の若い杜氏や蔵元が自分の食生活、郷土料理と外国の料理も含めた様々な料理を食べることで培われた味覚を反映することは、自然の成り行きでもあると言えるでしょうね。似た料理を食べていても、同じお酒は生まれないのですから。

日本酒はワインに押された、と思っていたのですが、ワインが日本酒の間口を広げてくれたんですね。
しかも、お米からできる日本酒は合わない料理はないといえるほど。

「誰かがコメントを書かれてましたよね、お米は日本人のDNAだ、って。日本人に合わないわけがないんです。

私にとって、『ワインは恋人、本格焼酎は気の置けない仲間、日本酒は連れ合い』みたいなもの。女性だったら夫、男性だったら奥さん。ワインほど違いの幅は大きくないけれど、その分、微妙な違いが楽しめて、余計にハマってしまう。いつもそばにして当たり前のもの、なんですね」

出版社で雑誌編集を担当されていた頃、吟醸酒を普及させた篠田次郎先生と出会い、先生主催のお酒の会に足を運び、先生に執筆を依頼して一緒に全国の酒蔵を回ったという山同さん。それが日本酒の認識を新たにして魅力を知ったきっかけといいますから、幸運なスタートであり、鍛えられたともおっしゃいます。

その後、ワインに興味を持ち、ソムリエの資格を取ったところに空前のワイン・ブーム。「忙しかった!」そうです。そして、再び日本酒へと帰って来て、少々緩やかではあるけれど、日本酒にもやっと光が差して来た。正にミューズでした。

さらに、山同さんといえば、いつも首から下げている一眼レフ。高校時代は写真部だったという腕前で、前述の取材では写真も担当されました。どこかの記者さんだったか、立ち話をしていた際、「文章が良くて、その上、写真も撮れて、盤石だよね」と、ふともらした言葉も、ごもっとも。それを持ってして日本酒へ力を傾けていらっしゃるのですから、……頼もしすぎます。

山同さん、お忙しいところをありがとうございました。

さて、次回、お二人目は女優の福山亜弥さんです。

質問は、
「あなたが日本酒に合わせてみたいお料理は?」
http://bit.ly/GVJwDH
奇しくも、今回が総論、次回が各論、といえる流れとなりました。
引き続き、ご投票をお待ちしています。


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